はじめに
脳卒中は突然発症し、生活はがらりと変化、命のみならず、寝たきりの可能性も高い。
そして、倒れてから後悔されることが多々ある。「血圧の管理がなされていれば脳出血にならなかったのに」、 「破裂する前に脳動脈瘤が発見、治療されていればくも膜下出血にならなかったのに」、「禁煙しとけばよかった」など。
一度脳卒中がおきると、やはり多くの人は何らかの後遺症に悩まされ、本人のみならず、家族、周囲の人が一緒に悩まされます。
脳卒中を専門としているクリニックだからこそ、倒れる前になんとかしたい、そんな思いで当院でも「脳のMRI健康診断」としての脳ドックをはじめました。
「脳ドック」
和光脳神経外科・内科の脳ドックは3テスラ高性能MRIを利用して、
”お気軽にご自分の脳をチェック!”、その結果を熟練した脳神経外科専門医/放射線科専門医が診断を行う、「脳の健康診断」です。
脳ドックの流れ
1.予約
脳ドック申し込み問診票を記入の上、ご提出ください。電話でもご予約いただけます。
【検査当日】
記入された脳ドック申し込み問診表を持参いただき、検査の中注意事項など確認いたします。
2.検査
MRI検査を受けていただきます。およそ20分程度で検査は終了致します。稀に、緊急検査等のため多少お待たせする場合がございます。ご了承ください。
3.検査結果
検査終了後、検査結果の正確性をあげるため当院では脳神経外科専門医、放射線科医の最低2名の医師によって診断致します。
報告書を約1週間程度で発送致しますので、必ずご覧ください。
MRI検査の注意事項
- 1. 検査の際は衣類についている金属などが撮影に影響がないように、検査着に着替えていただきます。
- 2. 検査室内には磁気を帯びているものは持ち込めません。
(時計、携帯電話、キャッシュカード、テレホンカード、眼鏡、入れ歯、ヘアピン)
また湿布、エレキバンも外していただきます。
- 3. アイライン、マスカラなどの化粧品の成分によっては、化粧を落としていただく場合があります。
- 4. ペースメーカー使用中など検査ができない場合がありますので、注意事項をよくご確認ください。
- 5. 閉所恐怖症の方は事前にお申し出下さい。
当院の「脳ドック」で脳卒中の危険因子などが分かります。
無症候性脳梗塞(隠れ脳梗塞)
無症候性脳梗塞(隠れ脳梗塞)とは、脳卒中発作の既往歴や神経症状が認められないにもかかわらず、検査などで発見されるごく微小な脳梗塞のことです。MRIやCTなどの精度の高い画像検査が普及し、脳ドックを受ける人も増えてきています。
それで、検査によってこの微小な脳梗塞が発見されるケースがたいへん増えてきているのです。日本のデータでは、脳ドック受診者の約6~14%に見られますが、60歳を超えると20~30%の方に見られるようになると言われています。
この無症候性脳梗塞は差し迫った危険はそれほどありませんが、何の対策もせずに放っておいていいのかというと、もちろんそうではありません。じつは、この無症候性脳梗塞(隠れ脳梗塞)を持っている人は、もっていない人にくらべて
3~4倍以上も本格的な脳梗塞を起こしやすいとされています。
また、最近の研究では、知覚すらできないほど非常にわずかながら、脳に障害が起こっているのではないかとする説もあります。だから、油断は禁物。自分が脳梗塞を起こすリスクが他人よりも高いことを自覚して、
高血圧や肥満などのリスクファクターの減少や生活習慣の改善に取り組まなければならないというわけです。さらに最近では、無症候性脳梗塞(隠れ脳梗塞)をもっと脳梗塞予防のために役立てようという動きも出てきています。
しかし、予防に心がけても脳梗塞になる方はいます。急に顔が曲がる、手足の力が入らない、しびれる、呂律が回らない、言葉が出ないなどがでるようなら迷わず救急車を呼びましょう!
大脳白質病変
大脳の深部にある白質といわれる部分の変化を言います。特に高度な脳室周囲高信号(PVH)を有する例は脳卒中発症の高危険群であるといわれています。治療可能な危険因子,特に高血圧の積極的治療を行う必要があります。また、認知機能低下、前頭葉機能低下にも関連があるといわれています。
無症候性脳出血
無症候性脳出血は、無症候性脳梗塞と同様に、症状を出していない小さな脳出血です。
今後本格的な脳出血を起こされる危険因子と考えられています。積極的な血圧管理が必要です。
未破裂脳動脈瘤
未破裂脳動脈瘤とは脳の血管にできたふくらみのことで、成人の2~6%に発見される(年齢や検出の方法で異なる)病態です。
脳の血管の分かれ目など血液の流れがぶつかりやすくまた血管の弱い部分にできることが多いようです。このふくらみが破れると脳の中にくも膜下出血というタイプの出血を来たします。これは脳の表面の比較的大きな血管が破裂することになるため出血の圧が高く、死亡率が30%以上となる危険な病態です。しかし、すべての未破裂脳動脈瘤が破裂するわけではありません。およそ、
年0.7~2%くらいの数字が示されていますが(10年間で7~20%)、破裂率は下記のファクターで異なっており、10ミリ以上の大きさでは年間4%近い破裂率も報告されています。特に破裂の可能性が高いものとして、
大きさが大きいもの(5~7mm以上)、場所が脳の後方や正中に近いもの、形状が不規則なもの、ご高齢の方、ご家族にくも膜下出血を来たした患者さんがいる家系の方、
喫煙、高血圧歴のかたが上げられます。このような方にはあらかじめ破裂しないように手術にて治療することも可能です。脳外科専門医とよく相談することをお勧めします。
脳血管狭窄/閉塞
細く狭くなることを狭窄といいます。脳へ血液を供給する大切な血管にコレステロールなどがたまって血管が細くなり(狭窄、きょうさく)、血行が悪くなると脳梗塞を起こす危険性が高くなります。
水頭症
脳の周りには、脳脊髄液(髄液)が存在し、脳を外部の衝撃から守るなど様々な役割があると考えられています。この髄液は、脳の中にある脳室と呼ばれる風船のような部屋の毛細血管(脈絡叢)から産生され、脳の表面(くも膜下腔)を循環して、主に頭のてっぺんにある静脈に吸収されます。この髄液は体の中で一番きれいな液体(99%は水・無菌)で1日に約450mLが産生されます。普通の髄液の総量は大人で約150mL、小児で100mLといわれていますので、この髄液は産生から吸収まで一日に約3回程循環して入れ替わっていることになります。
水頭症は、脳室内の水(脳脊髄液)が流れが悪くなり、頭の中に水がたまっていく病気です。くも膜下出血、脳室内出血、頭部外傷に続発することが多いのですが、原因のはっきりしないものを特発性正常圧水頭症といい、特に高齢者の認知症の一部にこの疾患が隠れていることがあります。主な症状である、『
歩行障害』、『
見当式障害』、『
尿失禁』を三徴といい、数日から数週かけて進行性に悪化していきます。
手術により改善する認知症といわれています。歩くのがへたになり、転びやすくなったり、物忘れが進んでいるようでしたら、専門医と相談しましょう。
参考:
特発性正常圧水頭症
その他
その他、脳腫瘍やその他の病気も見つかることがあります。その場合は一度、専門医と相談しましょう。
簡易脳内チェック
- 以下の質問に答えて脳卒中の危険がどのくらいありそうか見てみましょう。
- □高血圧と診断されたことがある。
- □体脂肪が男性25%以上、女性30%以上である。
- □糖尿病と診断されたことがある。
- □高脂血症である。
- □慢性の頭痛に悩まされている。
- □一時的に片頭痛がある。
- □手足の感覚がおかしい・しびれを感じる
- □顔が痙攣する
- □ご家族に脳卒中のひとがいる。
- □習慣的にタバコを吸っている。
- □週に2升以上のアルコールを飲んでいる。
- □日頃からストレスを抱えている自覚がある。
- □2つ以上の事を考えると、どちらかを忘れる・忘れやすい。
- □友達、知人の名前がとっさにでてこない。
- □みなさん、いくつ当てはまりましたか?
【上記項目で5つ以上当てはまる方】
注意が必要です。ご自身だけでなく、家族の為にも専門医の元で正しい検診を受けてみましょう。
【上記の項目の中で3つ以上当てはまる方】
将来的に脳の病気を抱える、発症の可能性が強いと思われます。生活習慣を変えるだけでも、脳の病は予防できます。脳の病を予防する為にも、正しい知識を持って対策を始めましょう。
【上記で当てはまる項目が2つ以下の方】
現時点では脳の病に関する心配は少なそうです。ですが安心せず、ご自身だけでなく家族の為にも、脳の病気に関する知識を学んでおきましょう。
普段から自分の健康を考えることは非常に大切です。心配なてんがあれば、一度「脳ドック」をしてみましょう。